相続不動産の売却
相続登記が未了のまま放置されていることが原因により、近年、所有者不明の土地や空き家になっている状態の建物がかなり多くあります。相続登記が義務ではないということもあるかもしれませんが、核家族化により親の土地建物は相続したが自分の家はあるので、誰も住まないまま放置状態になったりもします。相続登記を促進していこうという向きもありますが、そもそも遺産分割で協議が調わないまま長期化している等の已むに已まれない原因もあるかもしれません。
私が住宅営業をしていたときに顧客から依頼を受けた案件を題材に、相続登記が放置されている物件の売却までの流れをまとめてみました。ご参考に。
依頼内容
賃貸アパートに妻と幼い子供2人で暮らしていたWさんは、マイホーム購入のため同じ町内で土地を探していた。
表だって不動産屋が販売している立て看板の売地も適当なものがなかった。ただ、条件の良さそうな気になる空き地があり、その土地の状況の調査をしてくれないかとの依頼があり調査してみることになった。
後日、Wさんから住宅地図に指定された場所を頼りに現地に行って現況を把握することにした。
更地で80坪ほどありそうな土地ではあるが、隣接する土地は畑となっており古い納屋があった。おそらく同一所有者と思われるが、隣家もあったため詳細は法務局で公図等を確認することにした。
広い敷地の登記簿謄本によると、所有者Mさんは近隣の市になっており、その物件の所有者を直接伺って、事情を説明して詳細を聞いてみることにした。
所有者と思しき方は60歳前後くらいのご主人Mさんだったが、どうも身体障害者の方らしく、言語が不自由なため奥様が間に入って応対してくれた。
登記簿名義の確認からしてみると、登記簿の名義は亡くなられた父名義であり、その相続人はMさんも含めて兄弟3人であろうことだった。他兄弟2人はそれぞれ遠方他県に在住。土地は30年以上前から現状のままであり、畑は近所の人に土地の管理も含め無償で貸しているとのことだった。
そして今回の事情を説明すると、ぜひ売却したいとの意向だった。
この土地不動産を売却するために何をすべきか?
現状は
- 被相続人名義のまま相続人への名義変更(相続登記)が未了
- 各相続人が法定相続分に応じた持分割合で共有している状態
- 代表相続人が固定資産税は負担し続けている
売却のために
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍や各相続人の戸籍を収集
- 遺産分割協議書(法定相続登記をする場合は必要ない)が必要
- 相続人への名義変更をし買主への売買による所有権移転登記
1. 資料収集
@ 法務局 公簿等の調査
A 市役所 戸籍の収集 固定資産税評価証明書
B 法定相続情報一覧図の作成
2. 遺産分割協議
@ 遺産分割協議書の作成
A 遺産分割方法
3. 相続登記申請
@ 不動産登記概要
A 相続登記
4. 不動産の売却
@ 物件調査
A 不動産の評価
B 不動産売買契約書
C 不動産売却にかかる税金
1.資料収集
@ 法務局
公簿等の調査
- 不動産の登記記録は、その不動産の所在地を管轄する登記所が管理している。
- あらかじめ調査対象となる不動産を住宅地図で特定しておき、法務局で不動産がどのように登記されているかを確認。
- 管轄登記所に備え付けられた住居表示地番対象住宅地図で確認し、地番を申請書に記入し不動産登記事項証明書等を取得する。
- インターネットで取得も可能(登記情報提供サービス)
登記事項証明書の手数料は1通600円(335円)
登記事項要約書1通450円(145円)
地図証明書1筆の土地につき450円(365円)
図面証明書1事件に関する図面につき450円(365円)( )内はインターネットの場合
- Mさんの土地登記簿にはMさんの亡くなられた父名義の登記のままのみならず、昔の抵当権も登記されたままになっていた。 注1
注1: 休眠担保権の抹消
抵当権者等の登記義務者が行方不明のため,共同して抵当権等の登記の抹消の申請をすることができない場合,供託をした上で,その供託をしたことを証する書面を登記申請書に添付して,単独で抵当権等の登記の抹消を申請することができる。
休眠担保権の登記を抹消する方法
担保権者または権利承継者の行方がわかる場合
@ 担保権者等と所有権登記名義人が担保権抹消登記を申請
A 判決により担保権抹消登記を申請
担保権者または権利承継者が行方不明の場合
B 除権決定を受ける
C 債権証書と最後の2年分の定期金受取証書を提出
D 債権の元本・利息・遅延損害金の全額を弁済供託する
上記Dの方法がよく利用され、以下の条件を満たすことが必要
- 担保権者等が行方不明であること
- 被担保債権の弁済期から20年を経過していること
- 債権・利息・遅延損害金の全額を供託すること
A 役場
集める資料
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本
改製原戸籍として、昭和32年法務省令と平成6年法務省令がある
- 亡くなった方の住民票の除票 ない場合は戸籍の附票
不動産登記簿上の住所と登記名義人の最後の本籍が一致すれば問題ない 注2
注2 :対象不動産の登記名義人と被相続人の最後の住所地が一致しない場合
被相続人の同一性を証する情報について(平成29年3月23日民二第175号)被相続人の(住所の)同一性を証する情報として、次のいずれかの情報を提供した場合、不在籍証明書及び不在住証明書など他の証明情報を提供する必要はない
1. 登記記録上の住所が本籍に記載された戸籍謄本
2. 本籍及び登記記録上の住所が記載された住民票の写し
3. 登記記録上の住所が記載された戸籍の附票の写し
4. 被相続人名義の所有権に関する登記済証
相続登記申請の際、登記官は対象不動産の登記名義人と被相続人の最後の住所地が同一であることの確認をするため、上記にあるように不動産登記簿上の住所と登記名義人の最後の本籍が一致すれば問題ないのですが、相続登記が放置され続けた結果、住民票の除票や戸籍の附票が破棄されてしまうことがあります。
原則、戸籍の附票と住民票の除票の写しは保存期間が5年とされているからです。そして戸籍自体ははその戸籍に誰もいなくなった時点で除籍になり、その保存期間は150年とされています。また、死亡等の届出により誰もいなくなったり、本籍地以外の市区町村の転籍して除籍となった場合には、戸籍の附票も除附票となります。
そして廃棄された場合は、住民票の除票の写しが廃棄により発行できない旨の証明書をもらうことで証明することになります。ただ、注2の4にあるように被相続人名義の所有権に関する登記済証を添付することで対応できるようになりました。そもそも相続登記では添付書類として登記済証いわいる権利証は必要ないのですが、登記済証をもって所有者の同一性を確認する扱いのようです。
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 固定資産評価証明書 注3
注3 :相続登記未了の共有不動産の固定資産税の納税義務者は?
地方税法10条の2第1項により、相続人が数人いる場合は連帯債務
納税通知は以下の人を優先して発せられる。
1. 現実にその目的不動産を利用している人
2. 持分の多い人
3. その目的不動産のある市町村に居住している人
4. 登記簿に記載されている順序が早い人
そもそも戸籍の収集は相続人を確定するための作業になります。人は出生から死亡までの間に、婚姻、離婚、引っ越し、法改正により何度も戸籍が作り直されるため、それを遡って一体としてつながるように収集していく必要があります。古い戸籍になると分家や家督相続によっても戸籍が作り変えられていました。
一口に亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍の収集といっても、昔の戸籍は見方に特徴があったり、そもそも字を解読するのが大変な場合もあります。また、人の一生も様々ですから、転籍等が多いとそれだけ収集も大変になってきます。なお戸籍は各市区町村で管理されているため、転籍のある場合は各市区町村に郵送で請求することができます。
そこで、戸籍の収集の手順としまして、まずは配偶者の有無を見ます。配偶者は常に相続人だからです。それは死亡時の戸籍で配偶者の有無がわかります。もし死亡前に離婚していたら配偶者は相続人になりません。
次に子の有無を確認します。子は配偶者とともに第一順位の相続人だからです。子の有無は亡くなられた方の死亡時の戸籍だけではわからない場合もあります。それは古い戸籍から新たな戸籍に移ったときにすべての事項が引き継がれるわけではないからです。たとえば、離婚後に転籍をした場合は、死亡時の戸籍からは離婚の事実はわかりませんし、また離婚の際に親権が離婚した配偶者に移っているいれば、子がいても死亡時の戸籍にはその子が載らないようになっています。そして、戸籍がコンピューター化されたときに新戸籍が作られているため、コンピューター化前に戸籍から外れた子は現在の戸籍には載らないようになっています。
これらのことに留意しながら子がいることがわかったら、子が現在生きていることを確認するため子の現在の戸籍を取得します。普通はここまでで戸籍の収集は終わりますが、子がいない場合の戸籍の収集から第二順位、第三順位へと辿っていかなければならないので大変な作業になるかもしれません。
子がないことが確認できた場合は、第二順位である両親が生存しているかどうかを確認し、生存する直系尊属の有無を確認します。直系尊属もいないことが確認できたら、第三順位である兄弟姉妹の有無を調べるため、父母それぞれの出生から死亡までの戸籍を集めます。 兄弟姉妹の有無まで調べることになると大変な労力と取得費用がかかってくることは想像に難くないことがわかると思います。
固定資産評価証明書は毎年4月1日に更新され、納税通知書は原則1月1日の登記名義人宛に送付されます。しかし、相続があって放置し続けたとしても注3にあるような措置がとられるため、役場としては相続人の代表者に納税してもらうため、固定資産税の納税通知書の受領や納付について相続人の代表者になることの届出を求められます。
あと、相続登記用に固定資産評価証明書を取得する場合は、相続登記申請用に固定資産評価証明書を使用する旨を役場に伝えて依頼するようにすれば必要な情報が得られます。また、未登記の不動産があるかもしれないので名寄帳もあわせて取得するとよいでしょう。
B 法定相続情報一覧図作成(相続関係説明図作成)
- 従来、相続関係説明図を相続登記の際、法務局に提出すれば戸籍は原本還付でき、その還付された戸籍を金融機関等の相続手続きに使用していた。
- 平成29年5月29日から法定相続情報証明制度の導入により、法定相続情報一覧図の写しで相続登記に利用できる他、各種相続手続きに利用可能。(無料で必要な通数が請求できる) 注4
注4: 法定相続情報証明制度
- 相続人が被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本等を集め、法定相続情報一覧図を作成の上併せて法務局に提出すれば、登記官が内容を確認し法定相続人が誰であるかを証明する制度。
- 相続人が法定相続情報一覧図の保管の申出をすることによって、登記官が認証文付きの法定相続情報一覧図の写しを交付し、戸籍等の束の代わりにその写しで預貯金や自動車等の名義変更に利用できる。
- 法定相続情報一覧図の保管は5年間で、その間は追加で必要な場合は再交付の申出ができ、再交付を申出することができるのは,当初,法定相続情報一覧図の保管等申出をした申出人に限られる。他の相続人が再交付を希望する場合は,当初の申出人からの委任が必要となる。
- 法定相続情報一覧図の申出は被相続人の相続人(当該相続人の地位を相続により承継した者を含む。)がすることができ、代理人となることができるのは,法定代理人のほか,民法上の親族,資格者代理人(弁護士,司法書士,土地家屋調査士,税理士,社会保険労務士,弁理士,海事代理士及び行政書士)に限られる。
2.遺産分割協議
@ 遺産分割協議書の作成
- 被相続人名義のままだと、相続発生時から共有不動産になっている。つまり、各相続人の法定相続分に応じた持分割合で共有している。 注5
注5:死亡の日が昭和55年12月31日以前の場合は法定相続分が現在と異なるので注意
昭和22年5月2日までに開始した相続→家督相続
昭和22年5月3日〜昭和22年12月31日に開始した相続
→応急措置法による相続 兄弟姉妹の代襲相続権なし
昭和23年1月1日〜昭和55年12月31日に開始した相続
配偶者 1/3 子2/3
配偶者 1/2 親1/2
配偶者 2/3 兄弟1/3 兄弟姉妹の代襲相続制限なし
- 不動産売却を見越して、相続人への名義変更を単独名義にするか共有名義にするかを検討する。(売却をスムーズに運ぶには代表相続人として単独名義にしたほうがいい)
- 遺産分割をする際に留意する事項
- 行方不明者がいる場合
- 未成年者がいる場合
- 認知症などにより意思能力に問題のある方がいる場合
A 遺産分割方法
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
- 共有分割
- Mさんの件は3.換価分割の方法により、遺産分割協議書にはその旨と割合を記した。
- 遺産分割協議書には不動産は換価分割であって便宜的に相続人のうちの1人に名義変更をする旨の記載をしておく。売却代金を相続人で分け合う段階で贈与とみなされてしまい贈与税の対象となる可能性があるため。
- 相続不動産が数筆あり相続人も複数の場合は遺産分割協議証明書で対応。
参考判例
被相続人名義の預金口座払い戻し
- 従来、被相続人の預金債権は遺産分割の対象ではなく、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割される可分債権であった。つまり、相続人の一部から単独で分割債権として銀行に払い戻し請求できることになる。 しかし、銀行実務では、預金払い戻し請求書に相続人全員の署名と実印を押印し印鑑証明書を付ければ、相続人の一部からの払い戻しに応じている。
- 平成29年4月6日最高裁判決で、法定相続人の一部が信用金庫に被相続人の預金について法定相続分相当額の支払いを求めた事案で、共同相続された普通預金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきであるとし、また共同相続された定期預金債権及び定期積立債権は、いずれも相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである旨判示した。
- いずれにしても、遺産分割協議書は不動産や車等の名義変更にも使えるので、作成しておいた方が手続きはスムーズ
3.相続登記申請
@ 不動産登記
- 不動産の登記制度は、不動産の表示および権利を公示することにより、不動産についての権利の保全や取引の安全や円滑を図ることを目的として定められている。
- 登記は第三者対抗要件
- 平成17年3月から改正された不動産登記法により登記済証から数字とアルファベット12桁による登記識別情報の通知を受けるだけに変わった。
- 相続登記は義務ではなく、いつまでにやらなければならないといった期限もない。 よって相続登記を放置していても罰則を受けることはない、ただ相続登記をせずに放置することは別の問題が生じる。ex:二次相続、三次相続が起こり相続人の数が増えて複雑化し、手続きが煩雑化するばかりでなく遺産分割がまとまらなくなり、売却しようにも困難になる可能性が生じる。
A 相続登記
- 不動産の所在地を管轄する登記所の窓口で、書面による申請又は郵送による申請。
- 登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと供託ねっと)でのインターネット申請も可能。
- 権利に関する登記の申請は権利者と義務者による共同申請が原則、相続登記はその例外で相続人の一人から申請することができる。共同相続登記をする場合でも複数相続人の一人から申請できる。ただし、法定相続分だけ登記することはできない。
- 相続登記は相続を登記原因とする所有権移転登記であり、登録免許税は課税標準(固定資産評価額)の0.4%を収入印紙で納税する。
- 登記識別情報は登記名義人となる者でかつ登記を申請した人にしか通知されない。不動産を相続人複数で相続する際、複数相続人の一人から申請人となって申請する場合、他の相続人には登記識別情報は通知されない。
4.不動産の売却
@ 物件調査
(ア) 現地調査
- 物件の特定のため住宅地図で対象不動産の地形や周辺の状況を把握。
- 公図・地積測量図を参照に資料の示すとおりになっていることを確認。
(イ) 接面道路(土地の価値に影響)
- 接面道路すべての幅員をメジャーで測定。
- 役所の建設課で、道路の種類や建築基準法上の道路に該当するか否かの確認。
- 建築基準法上、2項道路はセットバックの必要あり。また、道路幅員が2.7m以上あって4mに満たない場合でも3項道路に指定されている場合もあり。
(ウ) 利用状況
- 更地かどうか?どのような建物が建っているのか?空き家なのか人が住んでいるのか?の確認
- 建物が建っていれば価値はあるのか?価値がないとすれば撤去費用はどのくらいかかりそうか?を見積もる。
(エ) 生活関連施設の調査
- 電気
- 上水道は公営か私営か?給水分岐管管理図で敷地の配管状況や引きこみ管の口径を確認。
- 下水道は公共下水道か浄化槽か?台帳管理図(公共下水道)
- ガスは都市ガスかプロパンか?ガス導管図(都市ガス)
- 公共下水と都市ガスが未整備である場合は、その整備計画の内容や進捗状況を調査。
(オ) 法令上の制限の調査
- 建築指導課・道路
- 都市計画課・用途地域、建ぺい率、容積率、土砂災害警戒区域、特別警戒区域、津波災害警戒区域
A 不動産の評価
- 価格査定は売り出し価格を設定する際の根拠になる。
- 不動産の鑑定評価とは不動産の鑑定評価に関する法律により制度的に確立し、不動産鑑定士による不動産の適正な価格の判定を求めるもの。ただし、一般の不動産取引まで強制するものではない。
- 原価法
- 取引事例比較法
- 収益還元法
- 時価の概念として、相続税評価における時価の定義では、時価とは不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に、通常成立すると認められる価格をいう。
- 公的土地評価
- 地価公示価格 時価とほぼ同水準
- 相続税評価 公示価格の8割
- 固定資産税評価 公示価格の7割
- 地価公示価格 土地取引の指針とさせるべく、国土交通省が全国の不動産鑑定士に鑑定評価を求め、毎年1月1日現在の各地の地価を公示しているもの。
- 土地評価の手順としてまず、対象地の属する地域の地価水準を把握する。そこから標準的な土地(標準画地)を把握する。
- 個別要因の検討として、対象土地の地形や接面道路等の個別的な諸条件を標準画地と比較して評価額を加算減算する。
- 買主の立場で不動産の評価を行ない、売りに出した場合いくらで売れるかを考慮する。公的評価が何と言おうと、鑑定評価書にどのように書かれていようと取引市場に売りに出して売れなければ何の意味もないということになるため。
B 土地売買契約書作成
- 不動産の売買においては、売買代金の支払い(残代金)と、物件の引き渡し及び所有権移転登記申請は同時に行うのが通常。
条文例一部抜粋
第6条(所有権の移転及び引き渡し)
本物件の所有権は、買主が売買代金全額を支払い、売主がこれを受領したときに売主から買主に移転する。
2.売主は、買主に本物件を前項の所有権移転と同時に引き渡すものとする。
第7条(登記申請手続き)
売主は本物件について、前条の所有権移転の時期までにその責任と負担において、抵当権等の担保権、地上権、賃借権の用益権その他名目形式の如何を問わず、買主の安全な所有権の行使を阻害する一切の負担を除去抹消しなければならない。ただし、この登記に要する費用は買主の負担とする。
- 売買契約による所有権移転登記は通常、銀行の応接室で売主と買主と司法書士が一堂に会して、代金の授受と登記に必要な書類の確認をした後、売主と買主の共同申請を司法書士が代理して申請する。所有権移転にかかる登録免許税は課税標準の2%。平成31年3月31日までの間に登記を受ける場合は1.5%に軽減。
C 不動産売却にかかる税金(主なもの)
- 売買契約書に貼付する印紙税
- 譲渡益があれば譲渡所得税
土地建物を売却したときの売却益は譲渡所得となり、所得税と住民税にそれぞれ課税される。
また、給与所得や事業所得とは通算できず、独自に課税される分離課税。
短期譲渡所得と長期譲渡所得があり
@短期譲渡所得 譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下の土地や建物を売ったとき
税額=課税短期譲渡所得金額×30%(住民税9%)
A長期譲渡所得 譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える土地や建物を売ったとき
税額=課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%)
- 平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付
- 居住用財産を売ったときは、一定の条件に適合していれば所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる。(居住用財産の3000万円特別控除)
- 相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる。(被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例)
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