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成年後見編

成年被後見人宛て郵便物の管理 

 

従来から成年被後見人宛ての郵便物を管理する上で、成年被後見人宛ての郵便物の配達を成年後見人と成年被後見人のどちらに転送してよいかという問題と成年被後見人宛ての郵便物を成年後見人が開封してもよいのかという問題がありました。

 

まず転送の問題ですが、たとえば一人暮らしの成年被後見人の方が施設に入所することとなって自宅が誰もいない状態になった場合に、成年被後見人宛ての郵便物を施設に転送してもらうのか、後見人に事務を遂行する都合で転送できるのかということが考えられます。

 

この転送手続を定めているのは郵便法35条になりますが、そもそも郵便物は受取人が住所または居所を変更した場合に、その受取人からその後の住所または居所を届け出ているときにその届け出に係る住所または居所に転送するということになっていて、その期間は1年間と定められています。

 

そうすると、転居前と転居後の受取人は同一人物である必要があり、成年被後見人に住所または居所の変更があったことも必要になります。ですので、成年被後見人については長期的な入院や介護施設に入所する場合には転送先を指定することに問題はありません。

 

しかし、後見人については、事務を遂行する都合上とはいえ、破産法にあるように破産者に宛てた郵便物を破産管財人の職務の遂行上、裁判所の嘱託によって破産管財人宛てに配達してもらいしかもその郵便物を開封して見ることができるというような規定がないため問題がありました。

 

次に郵便物の開封についてですが、他人宛ての郵便物を開封することについて関係してくる法律として、憲法21条2項では通信の秘密として、検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならないとして基本的人権規定としてあります。

 

少し法律的なお話になるのですが、憲法にいう基本的人権規定は私人間においてはできる限り尊重すべきであって直接私人間の関係を規律するものではないとされていますので、後見人が成年被後見人の郵便物を開封することを直接規定したものとはいえません。

 

また、刑法133条にいう信書開封罪では、正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者に親告罪として処罰の対象とされています。開封した文書が信書にあたるかどうかも問題にはなりますが、郵便法と信書便法に定める信書とは、特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、または事実を通知する文書とされ、請求書や証明書、特定の受取人に対するダイレクトメール等があります。ただ、刑法の信書開封罪の客体の対象となる信書は通説・判例は郵便法とは扱いが違っていたり、学説の見解もわかれています。

 

また、郵便物の転送方法によっても郵便物の開封について先の憲法の考え方や刑法の信書開封罪にあたるかもあって、扱いに非常に気を使う場面が多々あり、刑法133条にいう正当な理由を根拠に処理されていたことが実状でした。

 

この郵便物の転送の問題と郵便物の開封の問題に関しては、平成28年10月13日に施行された成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律によって、民法860条の2において、家庭裁判所は、成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは、成年後見人の請求により、信書の送達の事業を行う者に対し、期間を定めて、成年被後見人に宛てた郵便物又は信書便物を成年後見人に配達すべき旨を嘱託することができると定められ、その期間は6か月を超えることができないと定められました。

 

さらに民法860条の3においても成年後見人は、成年被後見人に宛てた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができるという規定も新設されました。ただし、この規定は成年被後見人についてであり、被保佐人や被補助人には適用されないという解釈になっています。 

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